台湾でよく見かける檳榔(ビンロウ)とは何なのか。

台北市内でも放射状に広がった長細いライトが点滅しているビンロウ屋を見かけることがあります。その店で売られているビンロウとはどういうものなのか、実態に迫ります。

檳榔(ビンロウ)は植物の実

檳榔の実

ビンロウというのはヤシ科の植物で、見た目もヤシの木です。ハワイなどにあるヤシの木と違う部分は、幹が非常に細く、大きな実を作りません。実はすだちほどの大きさで、緑色です。根っこのようなふさふさしたものが葉の根本にぶら下がり、実をつけます。あまり知られていないのですが、新芽の柔らかい部分は食べることができて、台湾料理の定番です。柔らかいタケノコのような食感で、味はあまりありません。炒め物にすることが多いようです。

ビンロウの細切り炒め

おにぎりみたいな構造のビンロウ

ビンロウの構造を簡単に説明すると、ビンロウの実を半分に割って、そこにキンマと呼ばれるコショウ科の植物の実を挟み、キンマの葉に石灰を塗り、包んでいます。お店では女性がせっせと1つずつ手で包んでいます。キンマというのが香辛料のようなものなので、それが味付けで、ビンロウ自体の味が強いわけではないそうです。他にも色んなフレーバーを入れることもあり、いわばタバコのブランドを選ぶ感覚です。

ビンロウ

噛むとどうなるのか

ビンロウには副交感神経に作用し、消化を促したり、瞳孔を収縮させる効果があるアレコリンと、鎮静効果を持つアレカイディンが含まれており、タバコのように気分が落ち着くのだそうです。なぜ石灰を使うのかというと、ビンロウだけの場合は苦味と渋味が強くてリラックスできるどころではないため、石灰の成分で緩和され、後味が甘く感じるとのことです。つまり、ビンロウの成分を体に入れたいけれど、すごく不味いので、石灰やキンマで味付けしているということになります。
そして噛んでいるうちに唾液と石灰が反応し、口の中が赤茶色になります。見た感じ吐血したかのような口になり、実際に見るとびっくりします。

体に悪いと言われるビンロウ

良くビンロウを常用していると、口腔ガンになると言われていますが、実際に体に悪いのは石灰だそうです。見た目では歯が茶色くなるだけではなく、アゴの変形も生じることがあるそうで、一時的な鎮静作用以外には何も体に良いことがありません。それを言えばタバコも同じくですが、場合によってはタバコよりも発がん性が高いという報告があります。
他にもビンロウを栽培するために大量の農薬を使うため、実を丸ごと噛むことで多量に摂取することになります。

なぜ、なくならないのか

だったらタバコのほうがいいんじゃないかと思うかもしれませんが、台湾ではレストランや公共の場での喫煙が禁じられているため、どこでも嗜むことができるビンロウの方が便利です。更に、タバコは1箱100元(約360円)に対して、ビンロウは1袋(約15個)で50元くらいなので、断然ビンロウの方がコストパフォーマンスが良く、圧倒的に人気があります。

ビンロウと言えばセクシーなお姉さんというイメージ

昔は少しでもたくさんのビンロウを買ってもらうために、セクシーな格好をした女性が男性ドライバーに売っていましたが、かなり規制されたらしく、今ではそういう光景は“公式には”ありません